コラム・エッセイ
孤独と孤立
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子新政権が誕生し、諸課題への対応が、期待と危惧を交えて注目される中で、孤独・孤立対策への指示もなされたそうだ。それを受けてか、TVでは高齢者の孤独・孤立問題への特集が組まれ、ゲストの精神科医を中心に問題と対策の解説があった。
その中で、孤立状態にある人の死亡率は高くなり、喫煙よりも危険性は高い、孤独はもはや現象ではなく病気と考えて対策を考えるべきだと語られていた。一瞬違和感を感じたのは私だけではなかったようで、一緒に見ていたわがつれ合いも反応を示した。
相談窓口相談員としてひきこもり問題にも関心を強めている彼は「ひきこもりは病気ではない」が持論で、孤独・孤立問題は高齢者に特有のものではなく、ひきこもりも同根の「病気でなく状態」だと言う。
彼の言うところでは、いわゆる専門家と言われる人たちは、ある状態を「なぜそうなるか」と説明する理屈を先ず作ろうとする。様々な要素を組み入れ、問題を説明できそうな「理論」を作り上げて発表する。それを聞いた世間は周囲で起こっていることをそれに当てはめて解釈し、納得しようとする。
病気なら病原体を見つけ、治療法を開発し、回復させることが出来るが、病気でないものに病原体を探しても的外れになるばかりだと言う。「では、どう考えたらいいの、どうすればいいの」と迫ると「ひきこもりも含めて、孤独・孤立が悪となるのは自分の抱える問題を自分一人で解決しなければならない社会になっているからだ。誰かが自分の側にいると思え、困ったときには助けを呼ぶという行動がとれるなら、一人暮らしが何十年続いても深刻な問題は起こらない」
「何でこうなったのか?ひきこもりや、孤独孤立問題は少子高齢化社会だから急に生じたものではない。教育制度、社会制度の変化が大きな原因だと思う」「まず、教育。いつの頃か、自主性尊重、何でも自分で解決する事を善とする方針がとられ、『〜世代』を作り出した。彼等は自分の問題を外に出さず自分で解決しようとし、相談も出来ず一人悩む」「同じ頃働き方改革の美名の下に派遣労働が拡大され、身分不安定、必要なければ切り捨て解雇。周囲は仲間でなく敵ばかりの職場が作られた。悩みを人に相談できず、学校を職場を去ってひきこもる。そんな環境を作る制度を改めない限り、幾ら居場所や交流の場を仕立てても、本当の対策にはならないだろう」
「本当の対策となる制度を考え作ってくれる政治が必要。現状では政治もマスコミも、問題の複雑な原因説明法を作り出して満足しているだけに見える。少子高齢化は国の存亡に関わる大問題。これに対するには国家百年の計を立て、揺るぎない確信で国をリードするリーダーの養成を図らなければならない。庶民の唯一の武器、清き一票を活用して」と尽きることなく語る彼に、うなづけるところも感じながらのお説拝聴のひとときとなった。
(カナダ友好協会代表)
