コラム・エッセイ
人間関係を考える
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子新年度が始動し、新社会人達がそれぞれの職場で希望に満ちて自分の道を拓こうと励んでいる。
ほとんどの人の社会生活は組織に設けられた職場に所属することで営まれる。それぞれの職場で課題に取り組み、成果を確かめながら仕事の進め方を会得し、自分の成長を感じつつ道を広げ延ばして行くのだが、その中では様々な悩みに向き合うことも多い。
その悩みの大きなものが職場の人間関係に関わるもので、同僚、先輩、後輩、上司、部下との関係に関わる問題にうまく対処できないことで悩みを深め職場を離れる例が特に近年多いようだ。
就労支援に携わる中で受ける相談にも職場での人間関係に関わる悩みがあり、周囲の関係者にはなかなか相談できず一人深刻に悩んでいる当人に「それはつらいことだね。あなたがそう感じるのはもっともだ。でも、誠実に課題に取組んでいれば、きっと理解されるよ」と慰め励ましても、決して解決にならないことは明らかだ。
この問題の本質は職場の人間関係を成り立たせているものと、本人が求める人間関係を成り立たせているものに違いがあることだと感じながら、それをここで本人に伝えていいのかどうか、迷ってしまう。
思うに人間関係は3種に分けられる。
一つは家族の人間関係で、これは「共に生きる」という意識を共有することで成り立っている。
一つは友人・知人の人間関係で、「共に過ごす」という意識を共有する。
他の一つは職場の人間関係で、「(同じ目標達成のために)共に行動する」という意識に基づいている。
家族の人間関係の基盤となっているものは「受容」で、お互いをあるがままに受入れること。友人の人間関係は学校・地域に関わるもので、その基盤は「共感(協調)」と「寛容(許し)」。
これに対して職場では、お互いの全ての行動は共通の事業目標達成を目指していることを確認できることが重要で、その基盤は「受容」でもなく「寛容」でもなく、「信頼」ということになる。
この人は目標達成に向けて努力しているという信頼がなければ、「面白いやつ」や「優しい人」というだけでは職場のいい人間関係は作られない。職場の人間関係に悩む人の多くは、職場の人間関係の基盤に、他の人間関係の基盤を想像したり求めたりすることにあるように、しばしば感じる。
こんなに懸命に課題に取り組んでいるのに、私の苦労も知らず、つらい気持ちも理解せず、成果を急がせ、仕事の仕方が悪いと叱るばかり、冗談も言えないこんな上司の下にはいたくない、大声で叫びたい思いだと告げる若者に、「やさしく指導して欲しい気持ちは分かるけれど、職場で大事なことは「報(報告)・連(連絡)・相(相談)」を適切にして、今どうなっていて、いつどうなるのかをきちんと伝えることなのよ。それが出来ていれば上司もきっと優しくなるでしょう」。
気持ちが少し落着いた頃、こんな話をしてみたいと思っているが、通じるだろうか。
(カナダ友好協会代表)
