コラム・エッセイ
行ってきました。
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子行ってきました北海道。10月初旬。各地では夏の名残をたっぷり残して夏日を継続しているのに、秋雨前線で雨続きの後快晴の秋空を迎えた北海道。そこで三泊四日だから、なんともうらやましい話なのだが、世の中そんなに甘くない。
この三日間北海道大学で開かれたひきこもり問題を考える精神医学の世界大会で、ひきこもり者支援の現場活動を紹介することになった。
十数年、多くの仲間と共に続けてきたひきこもり者支援事業。精神医学分野では研究と実践の中心になっているK教授に協力し助言も受けているご縁で、メタバース手法も採り入れた最近の私たちの支援活動を紹介したいと、数カ月前から準備してきた。だから出発直前まであれこれ準備で精一杯、観光予定など入る隙間はなかった。
世界大会というのだから、資料も発表も日本語は使えない。今ではあいさつ程度しか出来なくなっている英語力では到底間に合わないから、ほとんど娘任せになるが、それでも事業の紹介くらいは役目になるから、とてもルンルン気分にはなれない。それにもう一つ難題があった。
昨年末から続いた圧迫骨折のこと。一番の問題は寝床。ようやく慣れた自分のベッドの寝心地が外で得られるのか、現地のホテルと同じベッドのある近くのホテルを訪ね、寝心地を試し、ようやく一安心。出来上がった資料に目を通し、読み合わせなどするうち、たまたま北海道から来訪した知人から「北海道はもう寒いですよ。寒さの準備もしておいた方がいい」と親切な忠告を受け、ダウンコートを詰め込ンだバックに詰めて、いよいよ出発。
新千歳空港で降り立った大地は、本当にいい天気。秋の涼風を受けて、これが観光旅行だったらという思いがよぎったが、叶わぬ夢と気を取り直してホテルに向かい、先ず確かめたのがベッドの具合は合格。翌日からの学会は広大な北海道大学キャンパス。キャンパスの中をバスが通り、学生達が自転車で行き交っている。
代名詞になっているポプラ並木はまだ色づいていないが、空気は完全に秋。これまでずっとポプラと銀杏は同じだと思っていたが、全く別だということを初めて知ったのも、この度の収穫の一つ。
会議は40カ国の研究者の集い。発表者も聴講者も博士や教授の肩書きがついた人達ばかりの中で、Ms.とだけ記された私たちふたりの発表だったが、顔見知りの研究者や、これまで私たちの職場を訪ねてきた懐かしい顔も見られ、日本だけの問題のように受け取られていたひきこもりが、これだけ広く意識されん研究され、支援に関心が持たれていることを確認できたことは、絶好の行楽日和をホテルと会場の往復だけで過ごした4日間への十分なお土産となった。
2年ごとに開かれるこの会議、次の会場はインドだということだが、参加の打診はまだない。大慌てで詰め込んだダウンコートは結局出番なく、連れ帰られた。
(カナダ友好協会代表)
