2026年01月20日(火)

コラム・エッセイ

No.89 いつか、そう、いつか私も…

美人薄命 走れ!おばさん 中村光子

 “錯乱”という言葉を辞書で引いてみました。“晴天の霹靂(へきれき)”という言葉も引いてみましたら“晴天”は、学のない私の思い違いで“青天”でありました。

 いきなりの、変な書き始めで御免なさい。

 只今、私は、青天の霹靂の中、錯乱してこれを書いています。

 東広島在住の飛びっきりの美女・Y女史と知り合ったのは、かれこれ40年前のことです。彼女は、東広島で高級呉服店を経営していました。一方、私は徳山の町の片隅で細々と婦人服を商っていたのですが、なぜか気が合い長いお付き合いになったのです。

 40年前、お互いが出入りしていた問屋招待の旅行に行き、一緒にお風呂に入った時、彼女の高級指輪が抜け落ちてしまった。彼女がその事に気づいたのは私が高級指輪を拾ったあとでした。私は素知らぬ顔で、夜の宴会席で、伏せてあったお杯の下に指輪を忍ばせておきました。

 「それでは、乾杯」という音頭に合わせ杯を取り上げ、指輪を見つけた彼女は奇声を発し、その場は大盛り上がりでした。益々、2人は仲良しになりました。

 私は何度も彼女の家を訪問したものです。呉服屋の他に、テニスコート場も経営していて、15、16面もあるコートには、近くの広島大学の学生さん達も練習に来ていました。

 ここ10年ばかり、お互いに歳を重ねたからでしょうか、3日にあげず、電話での他愛のない話で、あるいは、近況を語り合ったりしていました。

 ところが、この1週間ばかり、電話がなく、私も雑事に忙殺され、電話をしませんでした。その事に気づいた私は何度も電話するのですがつながらないのです。

 落ちついてよく見ましたら

 「こちらにお電話を下さい」と、知らない電話番号が出た。ためしに電話をしてみた。

 「Yさん宅ですか?」

 「はい、私は娘です。母は亡くなりました」

 「…」思いもしない事に、私は言葉を失ってしまいました。

 いつ、お亡くなりになったのか、とも、ご病気だったのですか、とも、死の原因は何だったのですか、とも、問えず聞かず、受話器を握りしめていました。 

 “死”と言うものはこのようにして、何の前ぶれ(私にとっても)もなく…このようにオトズレル…のでしょうか。

 私は何も聞くことなく受話器を置きました。それは…それは…聞いても仕方のないことのように…思えたからです。錯乱しながらこれを書いています。

 いつか、そう、いつか私もこのように果てるのでしょう。

LINEで送る
一覧に戻る
今日の紙面
山口コーウン株式会社

「安全で 安心して 長く勤められる会社」をスローガンに、東ソー株式会社等の化学製品を安全かつ確実にお届けしています。安全輸送の実績でゴールドGマーク認定を受け、従業員が安心して働ける環境と「15の福利厚生」で従業員の人生に寄り添っています。

サマンサジャパン

来院者の方へもっと目配り、気配りをしたい。物品の補充や搬送に時間を取られる・・・
サマンサジャパンでは医療従事者の方がより医療に専念できるよう、コンシェルジュ、受付、看護助手、清掃、設備など様々な業務を行っています。

株式会社トクヤマ

トクヤマは、電子材料・ライフサイエンス・環境事業・化成品・セメントの各分野で、もっと幸せな未来をつくる価値創造型企業です。

山田石油株式会社

ソロや友達と過ごす「おとなじかん」から、親子三世代で過ごす「かぞくじかん」も楽しめる日帰りレジャー施設「くだまつ健康パーク」。屋内で遊べる施設や岩盤浴、サウナも充実!