コラム・エッセイ
再び 神無月(二)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)秋を形容する言葉はさまざまです。読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋。文化に親しむ人にとっては芸術の秋。音楽や舞踊、絵画や書、俳句や短歌、お茶やお花などそれぞれの分野で活躍している人たちがその成果を問いかけます。人生が一段と輝く季節です。
たゆまぬ練習と稽古。辛い鍛錬を乗り越えて本番を迎えます。積み重ねることでしか力は身に付きません。継続は力なり、です。一年を通して舞台公演や展覧会、作品発表はありますが、季節のよい9月から10月、11月にかけては週末のたびに各地で発表会が行われています。まさに芸術の秋。私も東奔西走の日々が続きます。
周南市文化会館で9月24日は周南邦楽連盟演奏会、30日は裏千家淡交会月見茶会、10月1日は防府市公会堂で山口県邦楽大会、7日はサンルートホテル徳山で俳誌「草炎」全国俳句大会、6日から9日まで山口井筒屋で山口県いけばな作家協会いけばな展が開催、11日からは周南市美術博物館で市美術展が開幕しました。周南文化協会会長、山口県文化連盟会長として参加、皆さんの奮闘する姿を目の当たりにして嬉しく思いました。
その場にいて五感で触れて感じるものを大切にしています。邦楽では箏や三絃、尺八の音色に日本の季節や情感を、月見茶会では中秋の名月に思いを寄せて茶人の細やかな心遣いを、俳句大会では十七音に託す作者の感性を、いけばな展では季節を演出する各流派の趣を、市美術展では平面、立体、書、写真へのみなぎる創造力を、肌身で感じました。
立ち上がる箏の美しい音色を聴いていて八木重吉の一編の詩を思い起こしました。詩集『貧しき信徒』の中の「素朴な琴」。
この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美くしさに耐えかね
琴はしずかに鳴りいだすだろう
重吉は明治31年、東京・町田生まれ。鎌倉師範、東京高等師範を出て英語教諭に。結婚、二児に恵まれながら昭和2年、結核のため29歳で夭逝。熱心なキリスト教徒で詩は慈愛にあふれています。「素朴な琴」は秋の澄み切った日差しと空気、重吉のよどみない心境まで伝えます。
11月3日は文化の日。周南文化協会では5年に一度の総力を挙げての祭典、市民芸術文化祭を開催します。5日までの3日間、文化会館と美術博物館で各分野の発表が繰り広げられます。人生に彩りを添えてくれる豊かな時をお過ごしください。
