コラム・エッセイ
再び 霜月(二)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)いよいよ晩秋。紅葉狩りを楽しまれましたか。今年の紅葉はいかがでした。立冬を過ぎて山里では冬支度が始まります。
周南市の山間地、和田地区で12日、6年に一度の式年祭が催されました。国の重要無形民俗文化財「三作神楽」が奉納され、多くの人で賑わいました。稲の取入れも終わり、山深い里は晩秋の風情。三作神楽伝承館前にしつらえた神殿で小学生から70歳代までの保存会メンバー総勢45人が舞い手と笛や太鼓、鉦の楽師を務め、朝から夕方まで23の演目を披露しました。
和田地区の林、原赤、中村の三自治会を合わせて三作と言います。約千三百年前、大飢饉があって多くの犠牲者を出しました。地元の河内社に五穀豊穣と疫病退散を祈願したところ、翌年から作物が実り、病気も癒えたので村人はそのお礼に神楽を奉納するようになったと伝えられます。三作神楽は昭和45年に保存会を発足、地元三作の全世帯を会員として「神楽を永久に伝承すること」を目的に地道な活動を展開、昭和62年に山口県の無形民俗文化財、平成12年に国の指定を受けました。
地元の人たちの高い志と熱い思いに感銘を覚えます。今回は伝承を目的とするクラブを2年前に創設した富田中学校の生徒17人も迎えました。8日の周南市小学校音楽祭では和田小学校全校児童16人が三作神楽を舞い、奏でました。周南市文化会館の舞台袖には保存会の土台を築かれた伊藤禎亮さんの姿がありました。現在の保存会会長はまだ40歳代半ばの佐藤貴志さん。彼もまた頑張っています。
かつて「日本人は芸能民族である」と言ったのは粋な国文学者、慶応義塾大学の池田弥三郎さんでした。日本人の暮らしと密接に結びついて伝えられてきたふるさとの芸能。五穀豊穣と疫病退散を願い、人々は生活の平安を神に祈りました。芸能の心は祈りの心。神楽、太鼓、人形芝居、踊りなど周南の地にも数々の芸能が生まれました。
「一年に一度の身近なお祭りの時ぐらい、私たちは静かに祭りがかつて持っていた意味を考え、祭りが伝えてきた私たちの先祖たちの感情をふり返ってみるのも、むだなことではない」。池田弥三郎さんの言葉をかみしめます。5年に一度の「しゅうなん郷土伝統芸能まつり」が来月17日、文化会館で開催されます。入場無料。ふるさとの心を訪ねる良き機会です。
どうぞお出かけください。
