2026年06月25日(木)

コラム・エッセイ

再々皐月(二)

随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)

 田植えの季節です。中国山地の山深い里では4月から5月の連休にかけて始まり、これから6月にかけて平地でも水を張った田に苗を植える姿が見かけられます。秋の収穫とともに農家が最も忙しい季節です。

 この時季には祭りも行われます。光市では14日と15日、普賢寺の普賢祭が行われて日中だけでなく夜も参拝客で賑わいました。参道の露店も子どもには人気で大人にも懐かしい光景です。かつては農機具や麦わら帽子、お皿などの食器も売られていて光市界隈ではこのお祭りをきっかけに田植えの準備に入りました。

 京都では15日が葵祭。祭といえば平安時代の京都では、4月の中の酉の日に行われていた加茂神社の祭礼を指しました。今は賀茂祭(葵祭)と呼んで夏の季語です。春や秋の祭りは「春祭」「秋祭」。祓いと災い除け、平穏な暮らし、収穫への祈り。米と結びついた日本人の暮らしにとって欠かせない行事です。

 神田川祭の中をながれけり  久保田万太郎

 井の頭池を水源とする神田川。飯田橋から水道橋へと都心を流れて日本橋へ。神田明神の神田祭を詠んだ句とも受け取れますが、実際は浅草橋の榊神社の祭りを題材としています。浅草では16日から18日まで浅草三社祭でした。神輿を担いだ男衆の掛け声、太鼓や笛の音に人々の心が浮き立ちます。風や光、木々の葉の色合いなどの変化を感じ取りながら心が躍動します。

 いずれ菖蒲か杜若。5月から菖蒲、杜若、6月に入ると花菖蒲が咲き始めます。薄い、濃い紫と花の姿が人の目を惹きます。花びらの付け根の模様や色、葉の幅などに違いがあって人の好みもさまざまでしょう。いけばなでは杜若の一種生けにその粋を感じます。

 息つめて莟をきるやかきつばた

 江戸後期の俳人、梅室の一句。金沢の刀研師。氏は桜井。晩年は京都で花の下宗匠として活躍しました。心を鎮めて花と向き合う作者の姿が浮かび上がります。

 紫のさまで濃からず花菖蒲  久保田万太郎

 はなびらの垂れて静かや花菖蒲  高浜虚子

 俳人を創作へと駆り立てる花たち。自然が作りだす造詣の美に心奪われる季節です。向き合っていると爽やかな風が吹き抜けます。さあ、出かけてみましょう。

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