2025年11月19日(水)

コラム・エッセイ

又 霜月(一)

随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)

 秋が深まります。朝晩は冷え込むようになってストーブを出しました。7日は「立冬」。紅葉を楽しみながら山里では冬支度が始まります。

 ともし火と砧の音のほか洩れず  後藤比奈夫

 砧を打つ音も、暗闇に洩れる土間の灯も寂しくなります。晩秋の村の風景を「ほか洩れず」で表現。冷気を感じながらも灯に温もりを覚えます。

 このような夜は読書が進みます。書棚に眠っている本、書店で表紙の美しさに惹かれて求めた本。ラジオ、テレビを消して、スマートフォンを手放して、本と向き合うのも心が充たされるひとときです。

 1か月間で本を読まなかった人は54%。その一方、本をもっと読みたいと思っている人も72%。読まない理由の最多は「時間がなかった」。読売新聞社は、10月25日から11月23日までの「秋の読書推進月間」にあわせて全国世論調査を実施しました。読書離れが年々深刻になっています。

 書店の減少も著しく、全国の市区町村のうち4分の1以上は、書店が一つもない「無書店自治体」。8月末現在でその数は498市町村に上ります。政府は6月、街の書店を地域の重要な文化拠点と位置づけ、減少に歯止めをかける「書店活性化プラン」を公表、支援に乗り出しました。こうした支援策を「評価する」人は70%。多くの人がその必要性を認めています。

 読書という親しい習慣が失われてきました。詩人の長田弘(おさだひろし)さん(1939〜2015)は『読書からはじまる』(ちくま文庫)で「子どもの本というのは、子どものための本ではありません。大人になってゆくために必要な本のことだというのが、わたしの考えです」「本を読むことが、読書なのではありません。自分の心のなかに失いたくない言葉の蓄え場所をつくりだすのが、読書です」と綴ります。

 美智子さまが1998年(平成10)の皇后の折、インドで開催された国際児童図書評議会世界大会にビデオ出演。基調講演で子ども時代の読書が楽しみを与え、青年期の読書の基礎を作ったとして「ある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていくときに、大きな助けとなってくれました」と語られました。

 たのしみはそぞろ読みゆく書の中に

 我とひとしき人を見し時

 読書は人生の贈り物。幕末の歌人、橘曙覧の一首をかみしめます。

LINEで送る
一覧に戻る
今日の紙面
山口コーウン株式会社

「安全で 安心して 長く勤められる会社」をスローガンに、東ソー株式会社等の化学製品を安全かつ確実にお届けしています。安全輸送の実績でゴールドGマーク認定を受け、従業員が安心して働ける環境と「15の福利厚生」で従業員の人生に寄り添っています。

西京銀行

【取扱期間 2025年9月1日~2026年3月31日まで】お預け金額10万円以上。手続き不要!さいきょう定期預金の金利で満期後自動継続。詳細は西京銀行までお気軽にお問い合わせください。

東ソー

東ソーが生み出す多種多様な製品は、社会インフラや耐久消費財など人々の生活に役立つさまざまな最終製品に使われています。総合化学メーカーだからこそできる、化学の革新を通して持続可能な社会に貢献していきます。

周南公立大学

2024年春、周南公立大学は新学部学科を開設しました。経済経営学部(経済経営学科)、人間健康科学部(スポーツ健康科学科・看護学科・福祉学科)、情報科学部(情報科学科)の3学部5学科体制となりました。大学の活動や入試情報も随時公開中!