コラム・エッセイ
「いのくまさん」
翠流▼「猪熊弦一郎展いのくまさん」が周南市美術博物館で開かれている。1902年に高松市で生まれ、93年に亡くなるまで、パリ、東京、ニューヨーク、ハワイと制作の拠点を移しながら多彩としかいいようのない作品を描き続けたという。
▼著名な作家で、雑誌の表紙などの仕事も手がけていた。駅の壁画などパブリックアートもある。今回の展覧会が開かれるまで、作品にどこかでふれていたはずだが、意識したことはなかった。しかし、11、12月に開かれたウィリアム・モリス展に続き、訪れる人の関心を高めずにおかない展覧会だ。
▼ウィリアム・モリス展では織作峰子さんの英国の風景などを撮影した写真が作品への見方を深めてくれていた。今回は詩人・谷川俊太郎さんのことばが案内役を果たしている。
▼会場は「かお」「とり」「ねこ」「いろ」「かたち」をキーワードに作品が並ぶ。描かれた時代も意図もばらばらだが、猪熊の世界観を谷川さんの言葉をヒントに感じることができそうだ。
▼猪熊は美術館を「心の病院」と考えていたそうだが、見ることにとどまらず、自分で描いたり、作ったりすることに結びつけばより楽しくなる。今回の展覧会を入り口にしてそれぞれの求める世界へ飛び出していくこともできる。
▼新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令され、リアルな旅行はままならない。「いのくまさん」開催中の美術博物館で、想像の世界へ旅立ちたい。2月23日まで開催中だ。(延安)
