コラム・エッセイ
下瀬信雄展
翠流▼県立美術館で下瀬信雄展「天地結界」が開かれている。結界は仏教用語。修行の空間を定める境、聖と俗を分ける境界といった意味がある。作品は森の中だろうか、ウラジロや花の群落、竹林などの白黒写真、雪化粧した冬の山や池に散ったモミジ、雨の日のヒガンバナなどのカラー写真もある。
▼結界を定めるのはこの場合は作者自身。見るだけなら癒やしの空間だろうが、これを撮影によって表現し、伝えようとすれば修行の場になる。やりとげた下瀬氏は2015年、土門拳賞を受賞し、今回の展覧会開催につながった。
▼周南市内の写真展でも作品を見かけたし、2009年には県美展で「サンタモニア」が大賞を受賞、翌年、その副賞の特別展示は「日本点景」を発表した。日本各地で出会った「奇妙な風景」を集めたシリーズだった。
▼展覧会場で魅かれたのは「ふるさと 山口の風景」の最初にあった「周南コンビナート」。題材が周南市内のプラント群の夜景であるだけでなく、縦91.5センチ、横8メートル42センチでオレンジやグリーン、海や空の群青などの色彩がちりばめられた迫力ある画面のためでもある。
▼このシリーズには青い水面が広がる「夏の海―長門市青海島」や「王子山から―長門市仙崎―」、萩市中心部の花火が上がる夜景の「萩市三角州」などが並ぶ。萩市で父親が始めた写真館を23歳で継ぎ、営みながら萩の風景から始めて74歳で到達した世界。ぜひ見てほしい展覧会だ。7月7日まで。(延安)
