コラム・エッセイ
県美展
翠流▼県美展が14日から3月3日まで県立美術館で開かれている。展示されている作品はいずも技能的にも優れ、そのうえに社会的なテーマを取り上げたり、作者の内面を表現していたりと見る人の足を止めさせる何かがあるものばかりだ。
▼分野別の区分がなく、大きさも展示が可能であれば自由。そのためこの展覧会以外では見ることのできない作品も多い。美術館のスロープの手すりを利用した作品、屋外に置かれた大作など展示方法でも意表をつかれる。
▼展覧会の趣旨に「『つくる・みる・ささえる』の創造的調和」とあるが、作り手と鑑賞者が作品を通じて無言のうちに対話することで作品に命が吹きこまれる。何を表しているのか、どんな技法なのか、どう受け取るべきなのか、見ることでいろんなことが頭の中に浮かび、思想や行動にも影響が及ぶこともある。
▼展示されている114点のうち4分の1ほどが周南、下松、光市在住の作家の作品。そのうち周南市の岡本国治さんは写真家なのだが、県美展で入選した「薬漬け」は割れた壷から薬のカプセルがあふれ出している立体作品。薬を飲んでいる10人ほどが協力して1年がかりで集めた5万4千個を使ったが、その中には亡くなった人もいる。生きていこうとする気持ちを表現したが、死別の悲しみも秘められている。
▼人は表現したい、人に伝えたいことを自由に作品として創作することができることを思い起こさせてくれる県美展。周南地域でも同様の展覧会が開けないものだろうか。
(延安弘行)
