コラム・エッセイ
ナベヅルの里
翠流▼周南市八代の地で命を落としたナベヅルを葬っているえい鶴(かく)地。神社の古本社の境内にあり、ツル慰霊祭の会場にもなっているが、そのかたわらに、亘理(わたり)寒太(一八九五―一九六三)の句碑「薮道を出て田の鶴と顔合わす」がある。
▼亘理は八代出身で京都帝大経済学部を卒業、小説も書いた。旧制中学、女学校で教壇に立って広島県立吉田高等女学校の校長も務め、戦後は八代に帰って新制八代中の校長や八代村の教育長をした。鶴の俳人としても知られ、一九五〇年に群鶴句会を結成、全国各地の俳人が八代を訪れて鶴の句を作った。
▼野鶴監視所のそばにも山口大学付属病院長なども務めた俳人で、鶴を愛した水田のぶほの「鶴戻り来るやしみじみ夕ごころ」の句碑。
▼鶴いこいの里交流センターの近くには埼玉県の寺の住職で、全国を行脚して八代を訪れた松野自得の「籾拾う鶴のまどいを乱すまじ」の句碑と、その隣に光市を拠点に活躍した詩人、礒永秀雄の「鶴」の詩碑がある。八代魚切の鶴塚近くにも杉山赤富士の「碧落に微塵湧きいで鶴となる」の句碑が建てられているという。
▼今年の慰霊祭は快晴。子どもたちも鶴の舞を屋外で伸び伸びと舞ったが、小学生が少ないことから中高生も応援に参加した。
▼自然保護にとどまらず、亘理らの活動で文化にもなったナベヅルと人々の交流。渡来するナベヅルの数は減少を続けて今季は五羽。しかしかつては各地に飛来していたナベヅルが本州の最後の渡来地に選んだ八代。これからもナベヅルの里であり続けることだろう。(延安)
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