2026年06月25日(木)

コラム・エッセイ

花わさび

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 周南市鹿野の「ふる里マルシェかの」で、花わさびを見かけた。すぐに購入して、久しぶりにわさびの醬油づけを作ってみることにした。鼻にツーンとくる独特の味わいが、どこか懐かしさを感じさせるに違いない。

 わさびといえば、刺身や寿司などに使われる根茎の部分をすりおろした練りわさびが一般的であるが、花や葉、茎なども食べられることは余り知られていないであろう。しかし、一度食べると、必ずやみつきになる。

 子供のころにはその味がけっして好きにはなれなかったが、大人になるとなぜかその味を懐かしく感じるようになった。以前、何度か挑戦してみたが、いずれもわさび独特の風味を出すことができず失敗に終わった。

 後になって、葉に十分な刺激を与えなかったことが原因であったことを知った。最近のレシピには、しっかり揉んで刺激を加えることや、密閉容器などに入れて保存することなどの注意点がわかりやすく書かれている。

 現在では、わさびの多くがハウスなど管理された場所で栽培されているようであるが、かっては、山奥の水のきれいな谷や沢などに自生していたものや自生地の周辺を畑にして育てた半自生のものがほとんどであった。

 平家の落人がわさび栽培と関係していたと言われるようになったのは、こうした自然環境や山口県内の主な産地である周南市鹿野や須金などに平家の落人が隠れ住んだとされる伝説が多く残されていたからであろう。

 これらの話からは、敵から逃れるために、荒れ果てた大地を切り開かなければならなかった厳しい生活を想像することになるが、その中にあって殺菌効果を持ったわさびが果たしたであろう役割に救われた思いがする。

 挑戦したわさびの醬油づけは、今までの失敗を挽回できるほどの味に仕上げることができた。どこか懐かしさが感じられる鼻にツーンとくる独特の風味は、熱々のご飯のお供だけでなく、酒のつまみにも最適である。 

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