2026年06月25日(木)

コラム・エッセイ

(61)クサイチゴ

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 突然、手に痛みが走った。「イタァ」不意をつく痛さに思わず声が出た。かなり厚い手袋をしていたので安心していたが、引き抜こうとしてつかんだ草の中に手袋を通り抜けるほどの何かがあったのであろう。

 引き抜いた草の一本一本をていねいに確認してみると、その正体が草に生えている鋭いトゲであることがわかった。とりあえず、毒を持っている昆虫に刺されたのではなかったことにひと安心することができた。

 しかし、鋭いトゲを持っている草が何んという名前であるかは不明であった。トゲを持った植物と言えば、サンショウ、サルトリイバラ、ノイバラ、ボケ、グミ、アザミなどがあるが、どれにも当てはまらない。

 名前にこだわる必要もなく、あきらめようとしていた時に、道端に咲いている白い花が目にとまった。いつもの年よりも多くの花を咲かせているようなので、手に取ってみようとしたところ鋭いトゲに拒まれた。

 トゲの鋭さは違っていたが、除草の時に受けた傷みに近いものを感じた。そこで、調べてみると、これまで身近にありながらほとんど関わりを持つことのなかった植物について多くのことを知ることができた。

 特に、驚かされたのが、「クサイチゴ」という名前であった。これまでも、赤い実を食べたことがあったのでイチゴの一種であることは何となく気づいていたが、名前にクサがついていることは意外であった。

 漢字で書くと「草苺」となる。草のように見えることから草の名前がつけられたと言われているが、実際にはバラ科キイチゴ属の落葉小低木であるらしい。春に5弁の白い花をつけると、初夏には実が赤く熟す。

 鋭いトゲは、おそらく「クサイチゴ」のものであったと思われる。白い花と甘いイチゴにも魅力を感じるが、鋭いトゲだけでなく地下茎によって縄張りを広げていく植物の園内での栽培は断念すべきであろう。

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