2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

(87)開聞岳

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 硫黄島に行くためのフェリーは、日帰り片道便と一泊二日の往復便がある。しかし、毎日のように運航されているわけではない。およそ1週間に各2便の運航については、三島航路出入港予定表で確認する必要がある。

 日帰りはできないので、民宿の予約は必須である。また、船舶なので天候の影響を受けやすい。その日の便が運航されるかどうかについては、その日の朝の6時30分以降に発表される。運航されることを祈るしかない。周南から行く場合は、新幹線が間に合わないので前泊する必要がある。

 そのため、もしも、その日のフェリーが欠航になれば、残念ながら、民宿をキャンセルしたうえで、旅行をあきらめなければならないことになる。

 以前から機会をうかがっていたが、地震が連続したことや低気圧の接近などで行くことができなかった。ようやく、10月の下旬、天気が回復したので行くことにしたが、あいにく島の民宿は予約でいっぱいであった。

 本来であれば、あきらめるべきであろうが、この機会を逃すと、おそらく一生行くことができないような気がした。そこで、思いきってキャンプをすることにして、何10年も使っていないテントと寝袋を持ち出した。

 いよいよ硫黄島に行く日の朝を、鹿児島港近くのホテルで迎えた。窓から見える海は、荒れてはいないようである。6時30分を過ぎて、三島村役場の自動音声案内で運航の可否を確認すると、運航の返事があった。

 鹿児島港を出た「フェリーみしま」は、およそ4時間で硫黄島に到着する。途中、鹿児島湾を出るまでの2時間は船の揺れが比較的少ないので、過ぎていく薩摩半島や大隅半島の風景をゆっくり楽しむことができる。

 その中で、薩摩半島の南端にそびえる開聞岳(かいもんだけ)や長崎鼻は見逃すことができない貴重な風景といえる。特に、雲一つない青空に浮かぶ開聞岳の姿は、薩摩富士と呼ばれるにふさわしい美しさであった。

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