コラム・エッセイ
【東京】旅は道連れ
周南漫歩◎「旅は道連れ、世は情け」―このたびの上京時の帰路、まさにこのことわざがぴったりの体験に恵まれた。
◎久原房之助翁と小平浪平翁の偉業をたたえる下松市など3市1町の交流会が東京の八芳園で開かれ、筆者は取材で出席した。この日は東京に宿泊せずに寝台特急「サンライズ瀬戸」に東京駅から乗ったが、筆者が予約した個室寝台の向かい側が、同じ交流会に参加していた下松市の㈱クナイの九内庸志社長の部屋だったのだ。
◎九内社長とは取材を通じて長年のおつきあいだけに、東京駅を発車しても話が尽きることはなく、交流会での感想から最近の話題まで“夜汽車談義”は大いに盛り上がった。
◎2人とも部屋は1編成に8室だけの「平屋室」に恵まれたが、料金は他のシングル室と同じ。車輪の真上にあるため通常は2段の個室寝台が平屋になっており、立って着替えができるほど天井が高く圧迫感がない。しかし車輪から伝わる激しい揺れが部屋を直撃し、バネがきしむたびにオッサンのうめき声のような奇妙な音が室内に響いた。
◎翌朝、新幹線に乗り換えるため岡山駅で共に下車したが、九内社長も筆者同様によく寝られたためか、揺れもきしみも気にならなかったようだった。
◎それにしても人との縁は面白い。きっと久原翁も小平翁も、そのつながりが一世紀を経て八芳園での交流会に発展したことをきっと喜んだだろう。九内社長と筆者の奇遇な一夜が、その思いを増幅させてくれた。
(山上達也)
