コラム・エッセイ
No.06 8月23日(日)①
〜ベトナム一人旅の記録〜 医療と福祉の国際協力の原点を求めて 記者・NPO国際ボランティアIMAYA理事 山上達也五つ星の豪華ホテルが1泊7,000円
一夜を明かしたTTCインペリアルホテルは地上16階建て、客室数192室という五つ星のホテル。ベトナム王朝風のユニホームをまとうスタッフは誰もが、お客にあいさつする時に右手を胸に当てて頭を下げる。
豪華絢爛なホテルだがバイキング朝食付きの宿泊費は7,000円台に過ぎない。屋上には立派な寺院があり、筆者は早朝に参拝して線香を手向けた。
今日は午前8時からIMAYAのカウンターパートである国立フエ医科薬科大学のOGCDC(遺伝カウンセリング・障害児支援センター)の皆さんとの面会が待っている。
腫瘍専門医を目指すIMAYA奨学生に感激
OGCDCの皆さんはフランスのNGOの協力でできたコーヒー店「Bee Coffee」で筆者を待っていた。行ってびっくり、11人もの人たちが筆者の到着を歓迎してくれた。
今回の旅はIMAYAのスタディツアーではなく、気ままな一人旅に過ぎない。しかしフエに行くのに旧知の皆さんに連絡しないのも失礼かと、OGCDCのチャン・ティ・フォン・アン事務局長に連絡しただけだった。
まずは下松から持参したマスコットキャラクター「くだまる」のぬいぐるみを一人ひとりにプレゼントした。すると「私はあなたの奥さんのサポートを受けています」と申し出る若い女性がいた。聞くとこの女性はフエ医科薬科大学の医学部4年生のファン・チャン・ウェンさん(20)。筆者の妻が年間3万円を拠出しているIMAYA奨学生の一人だ。
日本ではたかが3万円かもしれないが、ベトナムの医学部生にとって年間3万円は1年間の教科書代に匹敵する大切な金額。教科書が買えないと勉強は続けられない。
彼女とスマホの翻訳機能で会話すると、夢は「腫瘍の専門医になることです」と返ってきた。きっと彼女の身近には、がんで苦しんでいる人がいるのだろう。困っている人を助けたい純真な彼女の思いがかなうなら、年間3万円は惜しくない。
涙腺が崩れそうになった筆者の瞳を見ながら、彼女は「この人形をあなたの奥様と思って大切にします。奥様によろしく伝えてください」と伝言した。ここで筆者の涙腺はついに崩れた。IMAYAの奨学金制度の継続の責任を強く感じた。
久しぶりの日本人はJICA海外協力隊員
ここで筆者はベトナム入国以来、初めて日本人に出会った。青森県出身でJICA(国際協力機構)の海外協力隊員でフエに滞在する工藤桃子さんで、アンさんが筆者のために呼んでくれていた。工藤さんは日本の特別支援学校に相当するフエの「未来学校」で教員をしている。
筆者は実に3日ぶりに日本人に出会い、日本語で話す相手に恵まれた。ハノイに着いて以来、日本人に全く出会っていなかった。
筆者は英語が得意ではないし、ベトナム語はわからない。同行者もいないし、添乗員もガイドもいない。そんな全くの一人旅なのに孤独感も寂しさも全く感じてない。それはなぜなのだろう。温厚で人懐っこいベトナムの国民性に調和しつつあるのだろうか。
「くだまる」を持つウェンさん(左)と筆者
筆者を迎えてくれたOGCDCの皆さん
