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政治 : 光市のニュース
2024 光市長選 光市議選 現職後継の芳岡氏初当選 木村、笹井氏「刷新」届かず 市議選は新人3人当選
政治光市任期満了に伴う光市長選と市議選(定数18)が27日に投開票され、市長選は市川熙市長が後継指名した前市経済部長の芳岡統さん(55)が当選した。前市議会議長の木村信秀さん(62)▽前市議会副議長の笹井琢さん(57)は及ばなかった。市議選は現職14人、新人3人、元職1人が当選した。
投票率は、市長選64.63%(前回63.61%)▽市議選64.62%(同63.61%)で、衆院選と重なった影響で微増になった。
光市長選は16年ぶりの新市長を選ぶ選挙戦だった。同市の歴代市長は大半が元助役などの庁内出身で、元市議会議長の市川市長は故松岡満寿男元市長以来の26年ぶりの「庁外出身」だった。それだけに庁内出身の芳岡氏と、庁外出身の木村氏、笹井氏の戦いは注目を集めた。
芳岡氏は自由民主党や公明党、連合山口の推薦も受けて組織戦を展開した。衆院選と同時選になった影響が心配されたが、優位は脅かされなかった。
木村氏と笹井氏は現市政への批判票が分散したことが、芳岡氏の優位を許した形になった。木村氏は市役所本庁舎の光駅前移転による活性化を掲げ、笹井氏は上関原発と使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設反対を訴えて支持を広げたが、互いに現職批判票を食い合うことになって支持の伸びに限界が現れた。
当選した芳岡氏は島田の選挙事務所で支持者約100人の祝福を受けた。南典文後援会長や市川市長、河野亨県議、中元直樹連合山口事務局長のあいさつに続いて、美幸夫人とともに謝辞に立った芳岡氏は「これで政治家ゼロ年生が1年生の入学式を迎える前の心境になりました。皆様のご支援を政策に変えて市川市政を継承し、見直すべきところは見直して発展させ“よく見る、すぐ行く、とことん話す”を常に胸に抱き、市政を前進させます」と感謝した。
一方、市議選は前回市長選で善戦した磯部登志恵県議が擁立した女性3人の帰すうが注目された。藤川みゆき氏と井垣伸子氏は当選したものの、佐川由香里氏は12票差で涙をのんだ。一方で芳岡氏や河野県議と協調した選挙戦を展開した室積の新見浩明氏は手堅く当選を果たした。

支持者に感謝する木村氏
「伝えることはできた」木村陣営
木村さんは投票終了前から中島田の選挙事務所でスタッフ数人と待機。午前0時過ぎ、敗北を認めて「力不足、不徳のいたすところだが、伝えたいことを伝えることはできた」と述べた。
変わらないを変えようと訴えて草の根運動を展開した。光駅前付近への市庁舎移転が政策の目玉だったが「抵抗感があったのでは」と述べ、新市長には「これから光市を良い方向に導いてくれればいい」、自身の今後については「白紙」とした。

敗戦の弁を述べる笹井氏
「民間人としてできることを」笹井陣営
市内5カ所で個人演説会を開き、主張を伝えてきた笹井さん。室積の選挙事務所で約15人の支援者が見守る中、開票所からの連絡を受けて「現状置かれている問題点を主張してきた。また光市のために働いていきたい」と敗戦の弁を述べた。
檜垣教子後援会長は「一生懸命勉強して頑張ってきたと思う。残念だが、また機会を迎えられるよう勉強を続けて人間的にも成長してほしい」と話した。
2024 光市議選 現職14人、新人3人、元職1人が当選

当選を喜ぶ藤川さんら
警察官、米国留学の経験生かす 藤川みゆき候補
大和地区で16年ぶりの新人となった藤川みゆき候補(51)は、1400票を超える高得票で初陣を飾った。
岩田の選挙事務所で支持者と共に万歳を三唱した藤川さんは「警察官や米国留学の経験を生かし、市政を市民にとってよりよいものにしていきたい。地元の大和のことも市民の声をお聞きしながら取り組みたい」と意欲を話した。
支持者の河井克正さん(66)は「市政に新しい風を吹かせてほしいフレッシュな藤川さんならそれができる」と期待を込めた。

喜びを爆発させる清水さん(左から3人目)
元職が返り咲き 清水祐希候補
2020年に光市議選に初当選。22年の県議選光市区補選の出馬に伴い辞職した清水祐希候補(38)。補選で苦杯をなめて、再挑戦となった今回の市議選を共に戦ったのは4年前から支えてくれた陣営だった。
「次こそ光市のために」との声を受けながら戦い、獲得票は4年前から約250票増。選挙事務所横の自宅で家族と開票を見守り、開票速報に安堵の表情を見せた。
「政策に掲げた教育、健康、観光のほか、農業、林業の振興も訴えていく。議員定数削減にも力を入れたい」とまちづくりに意欲を見せる。

万歳で喜ぶ新見さん(左から2人目)と支持者ら
「この恩は室積のために」 新見浩明候補
9年間室積コミュニティセンターに勤務した経験から、地域に根を張って活動してきた新見浩明候補(53)。
室積に構える選挙事務所で開票速報の1200票の数字を見て、支持者らは「よかった」と声を漏らした。
新見さんは「これまでと変わらず地域の皆さんの声を聞きながら、9年間の経験を活かして地域の発展のために尽くしていきたい」と改めて決意。「支えていただいた皆さんへの恩は光市、室積のために返していく」と感謝を告げた。

当選を喜ぶ井垣さん(中央)ら
「市民と市議会、市役所をつなぐ」 井垣伸子候補
井垣伸子候補(69)は虹ケ浜の事務所で、女性中心の選挙運動を一緒に戦い抜いたスタッフや岡村晃治後援会長、支援した磯部登志恵県議と一緒に喜びを爆発させ、「市民の皆様と約束した通り、市民の皆様と市議会を結びつける、つなぐ人になります」と力強く語った。
関西学院大学名誉教授で、2年前に光市にUターン。磯部県議の勧めで出馬を決め、この日も午前2時過ぎの当選まで一緒に開票を見守った。選挙運動は自転車で回り、SNSも使って訴えた。
2024 光市長選 光市議選[記者解説]
対立候補の政策も取り入れる度量を 市議会は2期目以下が半数に
光市にとって16年ぶりの新市長は市役所で豊富な行政経験を積んだ芳岡統氏に決まった。市議選で選ばれた議員18人とともに、11月14日から4年間の任期が始まる。
市長選では市川熙市長の市政の「継承」か「刷新」かが問われた。市長が指名する後継者に、市議会の議長と副議長がともに挑むという前例のない構図になったが、芳岡氏が手堅く支持をまとめた。
市長選で政策論争が展開されたのは、市民にとって有益なことだった。とくに足踏み状態の光駅周辺整備計画では、芳岡氏が現在の市の取り組みの継承を主張するのに対して、木村氏は市役所本庁舎の駅前移転による活性化を提唱。笹井氏は事業費10億円で3年以内にバリアフリーを実現させると訴えた。
当選した芳岡氏は、たとえ対立候補が主張した政策であっても、現実性があるものや市民要望が強いものは、積極的に取り入れることを検討すべきではないか。光駅周辺整備に限らず、木村氏や笹井氏が掲げたさまざまな政策をしっかり吟味することも、新市長として必要なことに思えてならない。
市議会は新人3人の当選で、2期目の6人を加えると、実に定数18人の半数が2期目以下の議員で占められることになった。
勢力図の大きな変化はないと見られるが、芳岡新市長の「よく聞く、すぐ見る、とことん話す」をモットーとする市政運営とつかず離れずのベストな関係がどう構築できるかを市民は注視している。
(山上達也)

順調に進む開票作業