コラム・エッセイ
No.9 パレスチナのオリーブ
一喜一憂 藤屋侃士5月中旬。パレスチナの状況は急激に悪化した。21日にイスラエルとガザのハマスの間で停戦が合意され、少なくとも民間人への被害がなくなることに胸をなでおろした。
前回の「一喜一憂」で紹介した、ホーリー・チャイルド・プログラムのスタッフなど、私たちが知っているパレスチナの人々は、新型コロナウイルス感染症がまん延するなかでもがんばって活動を続ける心優しい人々だ。
クリスマスメッセージの中にあった、
「私たちは、あなたと共に、クリスマスの希望と平和と愛を分かち合います」
という言葉を、今一度心に刻みたい。
パレスチナで平和を象徴するもの、それはオリーブである。
結婚50年を迎えた昨年春、その記念に、我が家の庭にもオリーブを植えた。
オリーブは春に薄い黄緑色の小さな花が咲き、秋に実をつける。昨年植えたばかりのオリーブに、たくさんの小さな花が咲いたが、実はならなかった。
植えてすぐだから、実が成長しなかったのかと思っていたが、そうではないらしい。
オリーブは自家受粉ができず、2本以上の木がないと実がならないと聞いた。そこで、3月に2本目のオリーブの木を庭の隅に植えた。
運良く両方のオリーブの木に花が咲いている。まだ若い木なので今年の秋に実がなるかどうかはわからないが、一つ問題を解決したので希望を持って待ってみたい。
地中海沿岸地域が原産で、乾燥した気候を好むといわれるオリーブだが、全くの荒れ地に植えて根付くものではないらしい。
パレスチナでも特に南部は降水量が少なく、荒涼とした丘陵地が広がる。そのような中でも、人々は昔からオリーブを植えてきた。
乾燥地帯の夏は、朝晩と昼間の温度差が激しい。石は空気に比べて早く冷たくなるので石には夜露がつく。
パレスチナではこれを利用してきた。オリーブを植えたい場所にまず石を積む。登山道にある道しるべのような感じである。その石についた夜露が、点滴のように少しずつ地面を濡らしていくのだ。大地に水が染み渡り、植物が育つための力がついたところで、オリーブの幼木を植える。
このような方法で、パレスチナでは昔からオリーブを植えてきたそうである。そして、樹齢何百年という立派なオリーブの樹に成長していく。
オリーブが平和の象徴とされるのは旧約聖書の「ノアの方舟」にある、洪水を生き延びた後、ノアがハトを放ったところ、ハトはオリーブの枝をくわえて戻ってきて、地上にオリーブが育つ平和が戻ったことがわかったという一節からである。
それと共に、厳しい状況下でも、自然の力と人の知恵を活かして、大地に根付くオリーブは、私たちに平和への希望を抱かせてくれると感じる。
◇
(本人は入院中で執筆が難しいのですが、関わるエピソードなどを、家族で書きつないでおきたいと思います。)
荒れ地に積まれた石
春のオリーブ畑
たわわに実るオリーブ
