コラム・エッセイ
No.19 金継ぎの魅力
一喜一憂 藤屋侃士ガラクタとしか思えなくても、どうしても捨てられないモノがある。旅先で買い求めたモノもその一つだろう。旅先の土産物購入の鉄則は、次に買うことができないであろうものならば、「迷ったら買え!」。
パレスチナに長くいた長女は、我が家にも多くのパレスチナ手工芸品を届けてくれたが、東京の自宅にも「ガラクタ」があふれているらしい。
割れてしまったパレスチナの伝統工芸ヘブロングラスのボウルを、日本の「金継ぎ技術」で修理したと写真付きで連絡してきた。
ヘブロングラスは、パレスチナを代表する伝統工芸である。パレスチナ、ヨルダン川西岸地区の南部に位置するヘブロンは、約8千年前に設立された世界で最も古い都市のひとつ。2017年に「ヘブロン/アル・ハリル旧市街地」は、パレスチナの世界文化遺産として登録されている。ヘブロンのガラス産業は、ローマ時代の紀元1世紀頃にさかのぼると言われている。当時の遺跡からガラスが発見されているそうだ。ヘブロンでは、700年にわたって吹きガラスの伝統工芸の技術を守っている家族もいる。ヘブロンガラスは、紺色とターコイズブルー(トルコ石の青色、明るく緑がかった青色)で有名で、溶けたガラスにコバルトを加えて紺色にし、銅を加えてターコイズブルーにしている。カラーでないと伝わりにくいのだが、モノクロ写真でもこれだけの違いがある。
一方で、金継ぎは日本の伝統技術。欧米では、金継ぎされた陶器がアートとして評価されているらしい。割れたり欠けたり、ひびが入ったりした陶器を、漆で継いで修復し、しっかり固まってから、継ぎ目を金などで装飾して仕上げる。なんと、縄文時代には、壊れた土器を漆で継いで直すという修復がされていたというのだから驚く。継ぎ目に金などの装飾を施すようになったのは室町時代からだという。金を用いるようになってからでも500年以上の歴史がある。修復には少なくても1週間、数ケ月かかることもあるという。
金継ぎしたターコイズブルーの直径22センチのボウル。2000年頃に買い求めて、パレスチナでも日本でもサラダボウルとして重宝していたが、水道の蛇口にぶつけて割れてしまった。捨てるに捨てられず、ガラスも金継ぎできるということで修理に出したという。
ヘブロングラスでは大きめのサイズの食器はあまりなく、ターコイズブルーのボウルに一目ぼれして購入したという。元々、同じものは作れないと言われる吹きガラスの作品、それが日本の伝統技術によって、唯一無二のモノに生まれ変わったと、大満足そうだ。楽しく大切に使い続けられることが一番である。修理にかかった費用は聞かないでおこう。
ターコイズ色(左)と紺色(右)のガラスコップ
割れる前のヘブロングラスのサラダボウル
金継ぎしたヘブロングラスのサラダボウル
