コラム・エッセイ
No.20 受け継がれる味の記憶 〜錦松梅〜
一喜一憂 藤屋侃士東京に出かけたときの土産物は選びきれないほどの品物があるにも関わらず、なぜか定番になってしまう。これは、私に限ったことではないようだ。定番商品になるには、それなりの理由があるのだろう。
40年ぐらい前、東京に行くことが多かったのだが、よく家族に買っていた土産は3つ。新幹線の車内販売の定番商品であった、安倍川餅と田丸屋のわさび漬け。わさび漬けは自分用である。いずれも静岡名物だが、子どもたちは東京土産と思っていたらしい。それと「錦松梅」、佃煮ふりかけであった。これは娘たちが気に入っていた。この3つは、移り変わりが激しい土産食品のなかで、現在も銘品として販売されているのはうれしい。
「錦松梅」のホームページによると、創業者の旭翁(きょくおう)の道楽のひとつであった盆栽の中から、代表的な「錦松(にしきまつ)」と「梅」を合わせ「錦松梅」と名付けたという。この旭翁は掛川藩の武士の家に生まれ、うまいものを求めて全国を歩いた食道楽の豪傑だったそうだ。子どものころ、寺子屋でいつも食べた弁当のおかずがかつお節を削ったもので、それが気に入らず、長い年月をかけて完成した独自のふりかけが「錦松梅」だという。知人たちに自慢で供していたが、ある時に請われて結婚式の引き出物にしたところ、そのおいしさがたちまち評判になったそうだ。
そして、昭和7年に「錦松梅」は商品化された。現在も同じ東京の四谷左門町(現在の町名は四谷3丁目)の本店は続いていて、「錦松梅」のみを扱っている老舗である。
「錦松梅」には、鰹節、昆布、松の実、白ごま、きくらげ、しいたけなどが入っている。うま味がぎっしり詰まった甘じょっぱい味が、子どもたちも魅了したのだろう。
子どもが小さかったころ、「錦松梅」の楽しみの一つは、松の実を見つけることだった。茶色のふりかけの中から、少し黄色がかった色で食感も味も違う松の実が出てくると、「あたり」が出たような気分が味わえたらしい。
東京に住む長女は、「錦松梅」を土産にしてくれる。時代の流れに合わせてか小袋も販売されていて、使い勝手が良くなった。和食好きの孫娘は、弁当を持参して職場に行く。「錦松梅」は弁当に欠かせない味になっている。
「錦松梅」が商品化された90年前と現代では食品や料理の種類も異なる。冷蔵庫の普及で味付けもずいぶん変わった。その中でも時代を越えて続いている老舗の味。気が付けば我が家でも約半世紀にわたって定番のお気に入りになっている。
上品な袋で販売されている
包装紙とパンフレット
四谷三丁目の錦松梅本店
西京銀行のスマホバンキングアプリ。残高照会や振込、定期預金の手続きなどをスマートフォンで簡単・便利に利用できます。
口座開設や各種手続きもアプリで完結。詳しくは西京銀行までお気軽にお問い合わせください。
東ソーが生み出す多種多様な製品は、社会インフラや耐久消費財など人々の生活に役立つさまざまな最終製品に使われています。総合化学メーカーだからこそできる、化学の革新を通して持続可能な社会に貢献していきます。
