コラム・エッセイ
デジタル版画展「存在の証明」
翠流▼コロナ禍の中で迎えた秋。その重苦しさを一時、忘れさせてくれる展覧会が下松市のスターピアくだまつで26日まで開かれている小林功於さんのデジタル版画展「存在の証明」だ。
▼デジタル版画に取り組み始めた1997年から最近作まで大小の作品が会場いっぱい並ぶ。セピア色と言ったらいいのか、褐色の色調の画面には森や波を背景に人物や猿やライオン、人が騎乗した馬が配置されている。
▼画面では中世や古代など過去と現代が重なりあい、静と動が交差する。それぞれの作品づくりでも物語を意識するそうだが、会場全体はまさに小林ワールド。独特の世界の中に身を置くことができる。
▼世界各地の版画展で入賞した作品や、招待された作品が多いが、すべてこの展覧会のために改めてプリントした。展覧会が終われば、長く置くことなく処分してしまう作品もある。
▼データを保存しているから再現は可能だが、今回のように作品が並ぶことはこれまでなく、これからあるかどうかもわからず、まさに「一期一会」の世界だ。
▼海外で高く評価されている小林さんの作品。それぞれの素材の意味や組み合わせの意外性、同じ材料が作品によってどう生かされているのか、違いなどを見ていくと楽しさはふくらむばかり。
▼芸術家(作家)活動支援事業でこの個展を実現させた下松市文化振興財団に敬意を表したい。そして今回の展覧会が下松市だけで終わらず、多くの人が見る機会につながってほしい。(延安)
