コラム・エッセイ
新田樹展と佐藤健寿展
翠流▼周南市美術博物館で第31回林忠彦賞受賞記念写真展の新田樹「Sakhalin(サハリン)」、山口市の県立美術館で佐藤健寿展「奇界/世界」(㈱トクヤマ協賛)が開かれている。
▼「サハリン」は終戦まで日本が、その後はロシアが統治するサハリン(樺太)に、終戦後も残った主に朝鮮半島出身の女性を2010年から18年にかけて撮影した作品。写真展では女性の暮らしぶりや家族と、炭鉱跡の坑道の入り口、忠霊碑など日本統治時代の遺物も交えて展示されている。日本語を話す人たちの暮らしが戦後も長くこの地で営まれ、家族を作り、子どもを育ててきたことを、サハリンの歴史とともに伝える。
▼佐藤健寿展は「世界120カ国以上を巡り、ありとあらゆる“奇妙なもの”をカメラに収めてきた」という佐藤さんが撮影した建物や自然、祭りなどの人々の作品が並ぶ。
▼同じ写真という手法を使いながら、新田さんは一地域の特定の人たちを被写体としてきた。その作品からは新田さんが女性たちと築いてきた深い信頼関係や、信頼関係をもたらした新田さんの人柄も伝わってくる。
▼佐藤さんはありとあらゆるものにレンズを向け、その中から普通でない「奇界」なものと感じさせる被写体を並べているが、会場の説明に結論としては私たちによって「普通」でないものも、その地の人にとっては日常なのだと記されている。新田樹展は21日(日)まで、佐藤健寿展は6月11日(日)までの開催。足を運んでみてほしい。
(延安弘行)
