2026年07月27日(月)

コラム・エッセイ

第百五十四手「ミスター碁会所Uさん」

「碁」for it 小野慎吾

 碁会所の知り合いの方から、周南市の「徳山中央棋院」の元・席亭Uさんが去年亡くなったのを聞きました。90歳を過ぎても囲碁をバリバリにされていた方なので、すごく驚きました。何より、筆者は元・席亭のUさんに大変お世話になりました。折角なので思い出話をして行きたいと思います。

 まず、Uさんとの出会いは筆者が中学生時代の頃で、もちろん「徳山中央棋院」です。かれこれ30年以上前で、その時の「徳山中央棋院」は周南市の銀座でしていました。旧・新南陽の碁会所に通っていた筆者は、更なる囲碁の強者を求めて「徳山中央棋院」に行ったのは覚えています。Uさんは決して私を子ども扱いせず、一人の「碁打ち」として見てくれました。

 その頃の「徳山中央棋院」には平日は平均30人、日曜日は日曜碁会の大会をして平均50〜60人くらいの参加者がいたと思います。毎週日曜日はこの日曜碁会にほぼ参加して、自身の腕を上げました。その頃の碁会所に分煙・禁煙という概念はなく、碁会所のほぼ全員がタバコを吸っていたため、精神的にも鍛えられました。(笑)

 Uさんが碁会所の切り盛りをされていたので誰が誰と仲が良くて、誰と誰が仲が悪い等を全て把握されて、対局相手の組み合わせをされていたのに気づいたのは大人になってからです。皆さんが囲碁を楽しめる環境をUさんは意識的されていたのがすごい事だと思います。筆者も中学生時代の対戦相手はハンデなしで対局できる相手を意図的に多くして貰っていたと思います。そのお陰で強くなる事が出来ました。

 また、Uさんは「わしは碁会所の経営で息子達を大学まで進学させられるほど稼いだ」と自慢話をされた事がありました。昔の「徳山中央棋院」は年中無休でした。休むのは大晦日と元旦、2日くらいだったと思います。いつ行っても開いている「徳山中央棋院」は筆者にとって欠かせない存在でした。高校生を卒業するまで大変お世話になりました。Uさんに改めてお礼を申し上げます。

 大人になってから全国各地の碁会所に幾度となく訪れましたが、筆者にとって一番居心地が良かったのはUさんが運営する「徳山中央棋院」です。生前、Uさんは「碁会所を運営していると自身が対局する機会は少ない」と嘆いた事があります。碁会所の人数が奇数で手空きの人がいる場合は、Uさんがその方を待たせない様に対局をする時があります。ですが、運営の方が忙しかったため気兼ねなく対局できる時は本当になかったと思います。

 Uさんの囲碁の腕前はとても強く、県内でも屈指の打ち手だったと思いますが、Uさんは大会に出る暇がありませんでした。Uさんが運営されていた頃の「徳山中央棋院」は万人受けの碁会所ではなかったと思います。ですが、古き良き時代の碁会所だったと思います。筆者にとってUさんは「ミスター碁会所」と言える存在です。段々と万人受けする碁会所のみが生き残る時代になりました。

 天国でもUさんは「碁打ち」の席亭をされているのでしょうか。それとも心行くまで自身の囲碁を楽しんでいるのでしょうか。気にかかるところです。

 古き良き囲碁を守るために 「碁」for it(頑張る)!

徳山中央棋院記念写真(Uさんは手前左端)

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