コラム・エッセイ
第百五十八手「囲碁による成功体験」
「碁」for it 小野慎吾筆者は毎週水曜日に初心者の女性を教える教室に行っています。育児等が一段落して自身の時間を持てるようになった女性の方が参加をして下さっています。かれこれ3年以上は続けています。これをキッカケに囲碁を始められた女性の内2人は19路で補助があれば最後まで打てる棋力まで到達されました。これは素晴らしい事で、同じくらいの強さの2人は対局や練習を毎週楽しみに囲碁をされています。
その2人の対局自体は対局相手がいれば出来るので、筆者は日々の練習の仕方について説明をします。教室の中でこんな一幕がありました。囲碁はハンデなしから最大9子までのハンデをつける事が出来ます。※盤上に石が多い方が有利とされています。
その時の教室の内容は、「置き石の順番」です。置き石の順番は写真の順番に置いていくのが正式とされています。※写真は9子置く場合の順番です。最初に右上、次に左下、右下、左上…といった順番になります。他に2子〜8子までのハンデがありますが、基本的に黒は右を優先して、次に左と右左を繰り返します。右がなくなれば上下で最後に真ん中に打つ順番になります。
最初は写真を見ながら黒石を置き、上記の順番を覚えた後、何も見ずに置いていく練習をします。どうしても順番がちぐはぐになってしまう女性が1人おり、翌週、翌々週にこの練習をすると全く順番の原則を覚えていないケースがありました。筆者が長年囲碁を教えて来ましたが初の出来事です。そしてある日にこう言われました。「この順番通りに置くのは私には出来ない。囲碁が面白いと思って始めたのに面白くない」。
囲碁を続ける理由で一番多いのは「囲碁が面白い」からです。囲碁が面白い理由は人それぞれで、ゲームの内容、対戦相手との会話、囲碁友達が出来るなど人それぞれです。囲碁を面白いと思って始めているのにいつの間にか面白くなくなり、囲碁を辞める人は多々います。その方にこの練習をしないようにするのは簡単な事です。ですが、筆者はそうしませんでした。それは出来ない理由が自身でも捉えていなかったからです。
囲碁をして感じてほしいのは「成功体験」です。それはどんな小さな事でも構いません。今回の練習方法を避けることで失敗体験になって欲しくないと思いました。女性は順番に意味が感じられないとおっしゃられたので、ご自身が置きたい順番で置いてもらうように促しました。自身が置く順番を決めた後はその順番に従うという内容に練習を変更しました。自身が決めても順番を間違う事はあります。右上に置くと決めているのに左に置いたりすると、自身で順番の間違いに気づくケースが増えました。そうして自身が決めた順番で置き石を並べる事が出来るようになってきました。
それはその女性にとって、良い「成功体験」になり喜んでいた様に思います。筆者は人それぞれで囲碁の教え方を変えているつもりです。一緒に「成功体験」を喜ぶ事が出来るのは幸せな事です。これからも小さな「成功体験」を繰り返して行きたいです。
成功体験を得るために「碁」for it(頑張る)!
置き石の順番(9子)
